水田美術館は、10月1日(土)に浮世絵講座「名所絵の要件-広重作品から考える-」を水田 三喜男記念館講堂を会場に開催しました。
浮世絵講座は、長期休館中の美術館主催イベントのひとつで、浮世絵の主要テーマ5つについて 各専門家の先生をお招きしてお話頂くもので、10月1日は第二回目「名所絵?風景画」をテーマに大 久保純一先生(国立歴史民俗博物館教授、町田市立国際版画美術館館長)にご講演頂きました。
名所絵?風景画が、いかしにして美人画や役者絵のように浮世絵の一大ジャンルとして確立されるに至ったのかその要因をあげ、そしてそれに後押しされる形で登場し人気となったのが、葛飾北斎の《冨嶽三十六景》であり、この《冨嶽三十六景》の流行により、浮世絵風景画(名所絵)は美人画、役者絵に次ぐジャンルとして確立、後に続く歌川広重や歌川国芳らの風景画作画を促す契機になったと話されました。
そして、講座のタイトルにもなっている広重の風景画(名所絵)作品を取り上げながら、広重が風景画に用いた手法や主題の選択、卓越した空間構成と空気遠近法や色彩の遠近法に加え、名所図会を巧みに利用する事で、広重自身の言葉で言うところの「写真(しょううつし)」の風景-つまりリアリティ感溢れる景観描写に特徴があると指摘されました。また、定型化された名所のイメージを視覚化する事で広く大衆に受け入れられ、結果、商品としての成功に繋がっていると述べ、広重作品の成功から導かれる名所絵の要件とは、①描かれた風景がもつリアリティー、②人々が名所景観に抱くイメージの重視であると結論づけ、本講座を締めくくりました。 質疑応答では会場およびオンラインから多くの質問がなされ、また、本講座ミニワークショップ「名所絵立体アートづくり」も楽しんで頂きました。
大久保 純一氏(国立歴史民俗博物館教授、町田市立国際版画美術館館長)