ここのたび、城西大学創立50周年を記念し、水田美術館において、創立者水田三喜男が蒐集した浮世絵コレクションの名品を、年間を通してご紹介します。本展覧会では、2013年に水田家より寄贈された宮川長春《江戸風俗図巻》(えどふうぞくずかん)全巻を特別に公開します。
《江戸風俗図巻》(以下、本画巻)は、芝居小屋と吉原の遊郭という江戸二大遊興地を上下二巻に分け、細密描写によって雅やかで豊饒(ほうじょう)な世界を活写した長春風俗画の傑作です。作者の宮川長春(1682~1752)は、浮世絵の始祖菱川師宣の没後、師宣様式を摂取しながら、版画制作には一度も手を染めず、美人風俗を中心に肉筆作品のみを描き続けて美人画家としての地位を確立しました。本画巻の特徴は、長さが上下巻合わせて凡そ12メートル弱あり、長春の画巻としては長巻に属していることです。加えて、当時の色が鮮やかに残り保存状態も良いことが挙げられます。
このたびの展示では、本図巻を特別に一挙公開し、長春芸術の一端をご覧いただきます。あわせてコレクションの中から、ビゲロー旧蔵であった喜多川歌麿《太夫と禿図》や菊川英山《風流狐けん》を中心に遊女や芸者の風俗を描いた作品もご紹介します。