このたび、城西大学水田美術館におきまして「埼玉の歴史と文化に触れるⅡ 秩父巡礼」を開催します。
寺社参詣は、人々の信仰心を高めるものとして、貴族や修験僧、僧侶など特定の身分において古来より行われていました。 時代が下るにつれて民衆化し、江戸時代では、経済の発展や交通網の整備が気軽な旅へと人々を誘い、「江ノ島詣」や「伊勢参り」の大流行を生み出すなど、 「信仰」としてだけではなく、「物見遊山」としてもより身近な対象になっていきます。
本展では、埼玉県秩父市に点在する三十四ヶ所の観音霊場を廻る秩父巡礼を取り上げます。秩父巡礼は、当初、西国三十三札所、板東三十三札所にならい、三十三の札所を巡るものでしたが、 17世紀前半頃より三十四の札所へと変わり、以降三つの巡礼を合せて「日本百観音」と呼び、広く親しまれるようになります。
このたびの展示では、百観音霊場を取り扱った浮世絵《観音霊験記》から秩父の部分を描いた《観音霊験記 秩父順礼》をご紹介します。 本作は、各霊場の縁起を三代歌川豊国が描き、境内の景観を二代歌川広重が描いたもので、幕末期の観音霊場紹介の資料として貴重です。 本展では、35点のうち目次以外の34点を前期と後期に分けて展示します。また、江戸時代から明治期にかけての秩父巡礼あるいは秩父に関する研究書や日記、絵図なども併せてご紹介。 加えて、秩父三十四ヶ所の各札所を中心に、秩父の自然や文化を紹介するパネル展示も行います。 本展を通して、巡礼地として信仰性豊かな、自然と文化に溢れた歴史ある秩父の魅力をお楽しみください。