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011_赤ビーツに豊富な硝酸塩と血圧の関係


ビーツってご存知ですか?英名では、beetroot(ビートルート)と言われています。

最近、スーパーフードとして、各種メディアを賑わせていますが、なぜそんなに注目されているのでしょうか。理由について少し触れてみましょう。

ビーツが日本に伝えられたのは、江戸時代と言われており、当時は火焔菜(カエンサイ)と呼ばれていたようです。可食部である根を切ってみると、真っ赤ですので、昔の人はそう名付けたのかもしれません。ビーツにも品種があり、一般的に断面が赤いもの(デトロイドなど)を我々は赤ビーツと呼称しています。他にも紅白の切り株の模様(ゴルゴ)や、黃色(ゴールデンビート)など様々です。医療栄養学科では、学生サークル「DHA」が畑に赤ビーツの種を植えて、収穫し、料理に使用しています。

収穫後の赤ビーツ

収穫前の赤ビーツ

ビーツの含有成分の特徴としては、赤い色素成分であるベタレイン類や硝酸塩が豊富なことが挙げられます。ベタレインには、強い抗酸化作用があることが知られています。また、天然の赤い色素のため、食品添加物としても使用されています。硝酸塩は、血圧低下作用を有する一酸化窒素(NO;エヌオー)の原料となることが知られており、スポーツや長距離トレーニングなどで血管を酷使するトップアスリートに注目されています。
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NOが体内で生成されるには

NOが体内で生成されるには、原料となる硝酸塩が必要となります。図に示しておりますので、順を追ってみていきましょう。

①ビーツや野菜、果物など、硝酸塩を含んだ食材を食べます。
②咀嚼する際、唾液中に含まれる口腔内細菌が、硝酸塩を亜硝酸塩に変換します。
(食べた食材に含まれる一部の硝酸塩を亜硝酸塩に変換しています)
③亜硝酸塩、硝酸塩を含んだ唾液を飲み込むことで、胃まで移動してきます。
④食道と胃の接合している部分で、高濃度のNOが発生し、拡散します。
(NOは血液中に含まれるタンパク質に結合し、体の隅々まで運ばれていきます)
⑤唾液とともに胃に達した亜硝酸塩は、酸性条件下でアスコルビン酸(ビタミンC)と反応し、NOに変換されます。
⑥亜硝酸に変換されなかった硝酸塩は小腸から吸収され、約25%は、唾液中に再分泌されます。
⑦唾液中に分泌された硝酸塩の30%が、口腔内細菌によって亜硝酸塩に変換されます。

図 硝酸塩からNOへの変換

図のように原料となる硝酸塩だけでなく、口腔内細菌のちからを借りることで、効率よくNOへの変換が行われています。一般的に野菜には、硝酸塩を含んでいる物が多いですが、その中でもビーツには、特に多いため、注目されているわけです。

つい最近、この現象の重要性を裏付ける研究結果が報告されました。今年の11月にイギリスとスペインの共同研究チームが発表した内容によると、運動直後にマウスウォッシュで口をすすぎ、口腔内を殺菌すると、運動後の血圧が下がらなかったとのことでした。口腔内細菌を除去してしまった結果、硝酸塩から亜硝酸塩に変換されにくく、結果的にNOに変換されにくい環境となり、血圧低下作用が見られなかったようです。

詳しい研究結果に関しては、こちらからどうぞ
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0891584919307610


参考文献
K E L McColl, Gut. 54(1): 1–3, 2005
Jun Kobayashi et al, Nutrients. 7, 4911-4937, 2015
Katsunori Iijima, Akita J Med. 43: 1-6, 2016
C.Cutler et al, Free Radical Biology and Medicine. 143, 252-259, 2019

今回の執筆者

関口 祐介 助教(栄養教育学研究室)

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